ATOMと侮ることなかれ。高バランスの傑作機、Surface 3徹底レビュー

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マイクロソフトのタブレットパソコンのスタンダードラインとなるのが、名前にProの付かないSurfaceシリーズです。

従来のSurfaceシリーズはWindows RT系を載せた、スマートフォンなどのCPUと同じ系列のARMアーキテクチャのCPUを搭載するタブレットパソコンでした。

このシリーズの最新モデルであるSurface 3は、CPUアーキテクチャを一変。インテル製CPUの中でも、省電力型となる最新のATOMプロセッサを搭載してきました。

おかげで従来のSurface 2までで問題となった、Windowsデスクトップ用アプリを利用することが出来ない問題からは完全に抜け出し、豊富なWindowsのソフトウェア資産を活用できるパソコンに生まれ変わっています。

今回はSurface 3を入手しましたので、早速レビューしていきたいと思います。

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目次

スペックおさらい

Surface 3は10.8インチの1920 x 1280ドット、IPS液晶を搭載するタブレットパソコンです。CPUには、最新の14nm世代のATOM x7-Z8700を搭載しています。

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ATOMプロセッサは非常に省電力で、かつ、ある程度のパワーをも兼ね備えるようになりましたので、今、パソコンを評価する尺度では流行の言葉である「電力効率」という観点では、きわめて優れたCPUになっています。

フットプリントはA4用紙よりも一回り小さく、B5ファイルサイズぐらいでしょうか。以前「サブノートパソコン」というジャンルで盛り上がりを見せた、モバイル型のノートパソコン程度の大きさで、薄さも十分感じられるサイズに仕上がってます。

ATOMプロセッサが極めて消費電力が少ないこともあって、冷却はもちろんファンレス。負荷をかけた状態でも無音で動作します。

採用されているCPUのATOM x7-Z8700は、定格1.6GHz動作。バースト時には2.4GHzまでクロックが自動的に上がります。また、クアッドコア(4コア)CPUであるのも特徴です。

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統合されているGPUは、Intel HD Graphicsと呼ばれるもので、3Dの描画エンジンが16個(16EU)搭載されています。

製品のバリエーションは、CPUはATOM x7-Z8700のみで、メモリが2GBと4GB、ストレージはSSD 64GBと128GBの2種類、これらの組み合わせになります。また、ソフトバンクグループからLTE回線用のモデムを搭載したモデルが発売されているのも特徴です。

価格はマイクロソフト直販WebサイトでWi-Fiモデル、メモリ2GB、ストレージ64GBが81,800円+消費税。メモリ4GB、ストレージ128GBのモデルが91,800円+消費税となります。

⇒ Microsoft Store

手にしてのファーストインプレッション

レビューに用いた機種はMicrosoft Storeにて入手。メモリ4GB、ストレージ128GBのモデルに、タイプカバーとSurfaceペンをオプションで付けています。

送られてきた製品の箱は、段ボール箱でくるんだもので、中には特に緩衝材らしいものは入っていません。隙間を埋めるためのまるめられた紙が空間につめられているだけのシンプルなものとなっています。

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中身はこんな感じ。説明書やオフィスソフトのライセンスなどを記したリーフレットがいくつかと、本体と、ACアダプタのみとなっています。

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タイプカバーの方も本体と説明書のリーフレットだけの同梱です。

塗装はSurface Pro 4と全く同等の仕上げで、若干青っぽい雰囲気の梨地仕上げのシルバーです。サラサラした手触りで、本体があまり熱を持たないこともあり、夏の暑い時期でもべたつくことなく持ち運べそうです。また、キックスタンドとの色の違いは全くなく、一体感がしっかり出ています。

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タイプカバーは赤にしてみましたが、かなり鮮やかな赤で本体との色のコントラストがキレイです。感触は冬でも冷たさを感じないスエード調になっています。

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重量感は、「あ、軽い」という感触でも、「あ、重い」という感触でもありません。本体の見た目と重量がうまくバランスしてしいるのでしょう。見た目通りの重量感という感じです。

インタフェースのポートなどの外観

インタフェースのポートは、画面に向かって左側からmini DisplayPort、フルサイズのUSB3.0コネクタ、電源供給用のマイクロUSBコネクタ、ヘッドフォン端子がそれぞれ1つずつついています。

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マイクロSDカードのスロットは、キックスタンドの裏側。

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キックスタンドは角度が無段階調節ではなく、2段階のみの開き方になります。

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タイプカバー装着時の厚さ感はこのような感じになります。

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サイズがコンパクトなためか、タイプカバーを付けた状態でもずっしり感は感じません。

電源投入から最初のサインイン

まず最初にバッテリーの充電を行ないますがSurface 3は消費電力が小さいことから、電源供給にはマイクロUSBコネクタが使われています。付属のACアダプタは2.5A出力のもののようです。

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恐らく2A程度出力があれば、一般的なスマートフォン用充電器や、モバイルバッテリーからの給電も可能ではないかと思われます。

電源ONは電源ボタンを長押しします。長押し直後にSurfaceロゴが表示されないので、長押しする時間が今ひとつわかりにくい感じです。

起動後の画面は、Surface Pro 4のようなフォントのキレイさに対する感動と言ったものはありません。11インチクラスでフルHD液晶を搭載するモバイルパソコンが今はたくさんありますので、それらと同様の画面の雰囲気です。

初期状態ではフォントスケーリングは150%に設定されています。その状態でのスタートメニューや文字の大きさは、これぐらいのイメージになります。

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著者は11インチのモバイルノートパソコンを普段からスケーリング100%で利用していますので、Surface 3も100%で試してみました。

スケーリング100%ですと、スタートメニューと文字のサイズはこれぐらいの雰囲気になります。

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多くの人にとってこの設定では、文字が小さすぎると感じられる設定でしょう。また、この設定にすると、各種ボタンやアイコンなども一緒に小さくなるため、スタイラスペンを使わないとデスクトップモードでのタッチ操作は難しくなるかもしれません。

Windows 10のTH2にアップグレードした状態で、Cドライブの使用状況はこの程度です。

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使用領域は32Gとなっていますが、Windows.oldフォルダが15GBほど消費していますので、Cドライブの利用量は実質16GB~17GB程度という形になります。

CドライブはSSDですが、デスクトップパソコンなどで一般的なSATA接続ではなく、タブレットパソコンでよく利用されるeMMC接続となっています。このため、ベンチマーク上の速度は、かなり控えめな数字になります。

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液晶の表示

液晶はかなりキレイな表示です。Surface Pro 4と比べると若干黄色っぽい感じもしますが、基本的にはニュートラルな色再現です。

ちなみに、こちらの液晶も液晶パネルと表面の光沢パネルの間を樹脂で埋めるタイプのパネルのようで、無駄な反射がなくクリアな見え方をします。ただ、光沢パネル表面ではどうしてもかなり強い映り込みは出ます。

バックライトの明るさ調節は、アクションセンターのボタンからの設定は5段階ですが、タイプカバーのファンクションキーからは、もう少し細かく11段階(10%ごと)の設定が行えます。

昼間の室内では、25%~50%の間の明るさがちょうどいい感じです。

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タッチパネルの反応

指でもスタイラスペンでも、視差がとても少なくスムーズなタッチ操作が行えます。また、スタイラスペンによる筆圧の感知もスムーズで、OneNoteなどで気持ちよくフリーハンドの入力が行えます。

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ただし、タッチパネルをフリックしてはじくような動作を行なった場合には、スクロールなどのスピード変化に若干違和感があります。感触としては、「はじいた」あとにスクロールがスピードダウンするように感じられます。この部分は、Windows 10のOS本体のチューニングに、まだ詰めるべき部分が残っていると言うことのようです。

このような操作に関しては、スマートフォンOSのような人間の感覚にかなり近づいた動きにはまだかないません。

スピーカーからの音

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スピーカーはステレオ対応で、かなりの音圧を実現しています。ただし、スピーカーのボリュームを80%ぐらいまで上げていくと、音割れが発生します。

プレゼンテーションなどの用途であれば問題にならない部分だと思いますが、音楽の再生などに関しては、あまりボリュームは上げすぎない方が良さそうです。

通常のボリュームの範囲であれば、ヌケの良いかなりクリアな音での再生が可能です。この点は、Surfaceシリーズの美点の一つですね。

タイプカバー(Type Cover)

Surface 3のタイプカバーのキーは、かなり気持ちの良いタッチを実現しています。おそらくSurface Pro 4のタイプカバーと同じキースイッチが使われているのではないかと思います。

構造もほぼいっしょですので機械的な強度に変わりはないと思われるのですが、Surface 3のタイプカバーの方がサイズが小さいせいか、ベース部分のたわみが少ないようです。このため、使ってみてのキータッチは、Surface Pro 4のタイプカバーよりも、こちらのほうが良く感じられます。

キーピッチは18mm確保されていて、タッチタイプするには十分なサイズがあります。

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ただキートップは浮き石型・アイソレーション型と呼ばれる形ではありません。また、キートップが薄くキートップの縁の切り欠き具合が小さいため、慣れるまでは隣のキーに指が引っかかるかもしれません。

タッチパッドの面積は小さめですが、操作は特に問題はありません。クリックボタンは硬質なクリック感で反発力も強くダブルクリックはやりやすいです。ただ、クリック音はかなり大きめで、静かな場所では使うことに少し気を遣わなくてはいけないかもしれません。

ベンチマーク結果とゲーム

CPUの一般的な処理能力の目安として、CrystalMarkを実行してみました。今回は、参考程度の意味で先日測定したSurface Pro 4の値を併記します。

もちろん、第六世代のCoreプロセッサを搭載するSurface Pro 4のほうが圧倒的に高性能ですが、最新のATOMプロセッサの純粋なCPU性能の目安になると思います。この数値は、CPUのみで重たい処理を行う写真の調整や動画のソフトウェアエンコードなどの性能に、ほぼそのまま反映されます。

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(左がSurface 3、右がSurface Pro 4※Direct 2Dの値は取得失敗)

演算性能ではSurface Pro 4のほうが5割以上高速、メモリの帯域に至っては2倍の性能があります。ただ、Surface 3のATOMプロセッサはリアルクアッドコアCPUですので、しっかりとマルチコアCPUを生かせる作りになっているアプリでは、思いのほかしっかりした処理速度が出ます。

次に、3D性能の目安として、ドラクエXのベンチマークを流してみたのですが、こちらはちょっと驚く結果になりました。

なんと、1280 x 720ドットの画質普通での実行で「普通」評価が出ました。この部分でも従来のATOMプロセッサのイメージをいい意味で見事に裏切ってくれました。

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さすがに画面に表示されるキャラクターの数が非常に多くなると多少カクつく感じの動作にはなりますが、これぐらいの性能があるのならば、描画負荷の軽いMMORPGなどはSurface 3でも普通に遊ぶことができそうです。

ちなみに、Surface 3の液晶に1280 x 720ドットのウィンドウを表示するとこれぐらいのサイズになります。このサイズであれば、画面サイズの面でも十分にプレイ可能だと思います。

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MMORPG黎明期から生き残っている、パソコン性能に対して非常にやさしいゲームであるラグナロクオンラインもプレイしてみました。ちなみに、ラグナロクオンラインではキャラクターは2次元のドット絵ですが、背景は一応ポリゴンの3Dで組まれています。このため若干の3D性能は要求されます。

また、ゲームの設計が非常に古いため、ゲーム内の各種の特殊効果グラフィックが現在のGPUではサポートされていない古い仕組みを使って描画されます。その部分で、少しCPUにも負荷がかかります。

ラグナロクオンラインのプレイ感はと言いますと、ドラクエXベンチマークの結果から想像できる通りに、全く問題なく動作しました。今のラグナロクオンラインで最も描画負荷が高いと思われるエフェクトが画面にたくさんある中でも、普通にキャラクターを動かすことが可能でした。

また、無線LAN接続も非常に安定しているため、ネットワークゲームもスムーズにプレイ可能です。

その他のアプリの使用感

ブラウザのEdgeで画面を作り上げるのがかなり重いほうに属するWebページを開いたりしても、画面を表示しきる時間にはまったく遅さは感じません。OneNoteでスタイラスペンを使った手書き入力も非常にスムーズで、CPUがATOMである、といった形のハンデを感じることは全くありませんでした。

また、写真の編集、加工を行うことを想定して、CanonのデジタルカメラのRAW現像、フォトレタッチ用の純正ソフトであるDigital Photo Professionalのバージョン3を試してみました。

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写真をドット・バイ・ドット表示にした際のスクロールはさすがに滑らかに動く、とはいきませんでした。ただ、動作が引っ掛かるという感じではなく、スクロールの際のコマ割りが減ってカクカクスクロールする、といったイメージで、ある程度実用的に利用できます。

RAW形式の写真のデータからJPEG形式のデータを作る処理はさすがに時間がかかり、CPU性能の低さが顔を出す形になります。本格的にSurface 3でこの処理を大量に行うには少々無理がありそうです。

ただ、出先で試しに数枚写真を処理するなど、処理速度はこの程度のものだ、と、分かって使う分には十分に使い物なる性能とも言えます。

負荷をかけた時の本体温度

負荷をかけて動作させた際の本体の温度の上がりにくさ具合は、さすがATOM、という使用感になりました。

ベンチマークソフトを動かしたり、Windows 10 TH2へのアップグレード作業など、CPUや統合GPUに負荷のかかる状態になっても、本体はほんのりと暖かくなった程度の温度にしかなりません。

室温が低めの中での試用ではありましたが、ATOMプロセッサの低消費電力・低発熱の特徴が遺憾なく発揮された形です。

ターボブーストやATOMプロセッサのバーストモードなどは、CPUの温度がその制御に重要なファクターとなっていますので、冷却が不十分だとCPUがフルパワーを出し切れなくなります。

ですがSurface 3ではそんな心配は全くなさそうです。

少し気になる点

本当に重箱の隅状態ですが、タイプカバーのキーの取り付け位置が微妙に揃いきっていません。多分、1mm以下のずれなのですが、人間の目はこういった部分にはものすごく敏感に反応してしまいます。

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(Cのキーとピリオド、左のShiftが下にずれている)

機構的にずらさざるを得ない可能性もありますが、できればこの部分はキチっとそろえてくれたほうが、製品の高級感もぐっと上がると思います。

Surafe Pro 4との比較

タイプカバーを併用した際にも、外してピュアタブレットとして使用した場合にも、Surface Pro 4との使用感上の差は非常に少なくなっています。Surface 3も、ほとんどの利用目的で我慢をする必要がまったくないと言える実性能に仕上がっています。

バッテリーの持ちは明らかにSurface 3が上です。無線LANを常時ONにしながら、Webで調べ物をしつつの文章作成を行うといった軽作業ならば、バッテリーは8時間以上持ちそうです。

重量の軽さ、サイズの小ささの点でも、モバイル用途ではSurface Pro 4よりもSurface 3のほうが適した機種であるというのは間違いがありません。

ちなみに、Surface 3とSurface Pro 4とのサイズ比較はこんな感じです。一回り小さいですね。

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(左がSurface 3)

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(上がSurface 3)

Surface 3を選ぶ際のネックになりそうなのは、画面サイズの小ささという部分が大きいでしょう。10.8インチの液晶は多くの人にとって少々狭く感じられるサイズのはずです。画面に表示できる文字数としての情報量を優先すると、どうしても表示される文字は小さくなり、その点も問題になってきそうです。

メインPCとして購入を検討する場合には、この点がSurface Pro 4とSurface 3のどちらにするかの分岐点になるかもしれません。

・Surface Pro 4 の詳細レビューはこちら

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性能的にはもちろんSurface Pro 4のほうがずっと大きな余裕がありますが、Surface 3でもWeb巡回、ネット動画視聴、オフィスソフトでの文章作成などといった用途には、十分以上の性能があり、全く問題なく利用できます。

まとめ

ネットブック当時のATOMプロセッサ採用パソコンの使用感を覚えている人ほど、Surface 3を使ってみた時の驚きは大きいと思います。それぐらいにSurface 3はよくまとまった、非常に実用性の高いマシンに仕上がっています。

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Surface 3はマイクロソフトのタブレットパソコンのスタンダードライン製品としての大切な役目もありますが、別の観点では、最新のATOMプロセッサの可能性を証明してくれる製品でもあります。

実際、使用していても「ATOMプロセッサだから」というエクスキューズが多くのケースで不要です。画面描画の負荷の軽いタイトルであれば3Dもののゲームにも十分に対応が可能で、一般的な使い道であれば、ほとんど全てSurfece 3で十分に対応ができます。

消費電力も発熱も小さい、とてもバランスの優れた傑作、といえる製品に仕上がっていると思います。ATOMプロセッサにネットブック時代から付きまとう悪いイメージを払拭できるだけの力もあるかもしれません。

画面サイズの問題をクリアできるならば、メインのパソコンとしても十分に役に立つ製品です。マイクロソフトは、下克上でSurface 3がSurface Pro 4のパイを食ってしまう心配をした方が良い、かもしれませんね。

⇒ Surface 3 公式サイト

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